令和元年度大和市剣道道志村研修会の回想

 

研修会に向けて

 

参加者の皆さん、大事なお休みを返上して多数ご参集していただき、ありがとうございます。

本研修会は各支部指導者の指導力向上と親睦を図るために行われていますが、様々な剣友に集まっていただきました。

 

最初に

過日関東を来襲しました台風第15、19号における被害は甚大な被害を及ぼしました。近々にあった19号の被害は全国で77人死亡 10人不明 346人けがと言われています。大和市では境川や引地川が危険氾濫水位迄達し、地域住民は南部の小学校に相当数避難しました。ここ道志村では、道志みち(国道413号線)と村道の計5カ所で土砂の流出が発生したそうです。川の氾濫や土砂が崩れ、民宿や田畑に相当な被害があったといわれています。また、ご存知の通り9月から小学1年生の女の子が行方不明となっており、現在は土砂が流れ出しボランティアによる捜索も一時、中断されているとのことです。

被災に合われた方、ご家族ご親戚、地元の関係のお見舞いとお亡くなりになった方のご冥福を謹んでお祈りいたします。

 

1. あいさつ

 

剣道三昧   私が聞いた話        大和市剣道連盟 戸塚義孝

 

 道ということについて

道とは、人の守るべきすじみち と字引にある。中国の古い書物の中で中庸という本には「天の命之を性といい、性に率(したが)う之を道という」と大道を定義している。中略、大道は生命力、調和、変化の三つに分かれている。これを剣道に当てはめると、心法、身法、刀法の三つの位になる。道は行に入って自得するより外に途はない。剣道は剣道の稽古という行によって道に進むものであり、禅が座禅という行により道に進むものと似ている。その行を禅では三昧という言葉で説明するが、これは心を1つのことに留めて散乱させないことを言う。剣道では、眼・腹・剣頭(切っ先)の一致ということになり、一所懸命に油断しない、気を抜かないことの連続が大切である。ところが、人間一心になると、硬直状態になったり、「力み」がでたり、やりたいようにすれば乱れてしまう。なかなか難しくて、正しく修行するしか途はない。

 

また、孔子は論語の学而編に次のように言っている。「子の曰わく、 吾十有(ゆう)五にして学に志す。 三十にして立つ。 四十にして惑わず。 五十にして天命を知る。 六十にして耳順(したが)ふ。 七十にして心の欲する所に従って、矩(のり)を踰(こ)えず」≪私は十五歳の時、学問を志した。三十歳の時、何者にも動じない立場を持てるようになった。四十歳。迷いも無く、やるべきことをやったよ。五十歳でようやく天命を知るに至った。六十歳ともなると、人の話を素直にきける余裕も出てくる。七十歳。もはや心の思うままにふるまって、しかも道義から外れることが無い、こういう境地に至ったのだ≫ そして、釈迦は「我思うがごとくに言い、言うがごとくに行う」と言っているが、我々未熟な者は、思った通りに言ったら支離滅裂となり、思ったとおりにやったら大変だ、脱線ばかりになってしまう。これを我々の生活に当てはめると、当たり前のことを、当たり前にやるなどということは、できるものではない。しかし、それを理想として置いて、剣を通してこれを学ぶ。これが剣道ということである。剣を通して道を学ぶということは、試合に勝つことでも、段をもらうことでもない。剣を通して人間形成をする、これが剣道の目的である。

小川忠太郎範士(国士舘卒。全日本剣道連盟範士九段。小野派一刀流免許皆伝。警視庁剣道名誉師範。)

 

道志村研修会は剣道三昧の2日間です。大それたことはできませんが、一意専心、普段の喧騒や仕事を離れて一心不乱に稽古をお願いします。交剣知愛。剣道の話や人生の話。たくさん語りましょう。

 

最近の世の中は気候不順、奇々怪々諸説諸々で、モラルは決裂、世界全体は混とんとしています。このような時代を過ごしていくためにも大事なのは、剣道を通して現実にあるどのようなフィールド・環境でも生き抜いていく心を学ぶことです。そして、剣道の行を通して自らがあらゆるものに変化を生み出していくことも必要とされ、今の時代、そうした力を身につけた野武士が求められているかもしれません。

 

2. 講師の紹介(大和市特別師範)

 

飛知和利文先生 教士八段

県立橋本高等学校教諭 

神奈川県学校剣道連盟理事長

 

織口剛次先生 教士八段

神奈川県警察本部警務部教養課 剣道副首席師範

神奈川県剣道連盟 本部役員審査部

 

3. 講評ポイント

 

飛知和利文先生講話

持田盛二先生の遺訓から

剣の理法は日本刀の概念から修行する必要がある

刀法を通してしのぎの使い方、心法は心を読む”きざし”を感じること、身法は上虚下実

「相打ちの勝ち」すなわち捨て身で打突をすることが、技を起こす神秘につながるということ。

無心で打った技、無心の機会で剣道を行いたい。

 

立ち合いから

 発声にエネルギーが感じられるように

 剣先の使い方に工夫を

 袴の履き方など着装には気を付けて

 自分の構えを十分に相手に利かせたうえで攻めて打突に入ること

 初太刀の打ちは大切である

 体さばきで自分が崩れないように

 打突の好機のねらいをしぼる

 仮に打たれても落ち着いて次の機会を狙うこと

 打突が軽い人が多い

 打ち切る、言いきる、使い切るように進めること

 審査の時は審査員が見える位置に動くこと

 上の技、下の技を使い分けること

 打てなくても攻めること

 空を切らない打突をすること

 間合いを前に詰めすぎない

 相手を攻めて引き出すこと

 重みをしっかり出すこと

 風格が大切。仕太刀の位、気迫は相手を上回るべし

 思いっきりの良い立ち合いを

 構えに硬さが出ないように

 相手に合わせるのでなく、先を取ること

 普段の剣道修行は素振りから稽古迄一切気を抜くことのないよう進めること。それぞれの稽古内容はばらばらのものでなく、例えば素振りや切り返しはウォームアップではありません。それぞれの稽古がつながっていく稽古を行っていくこと。

 平素の稽古を大切にすること。コツコツと積み上げたもので行うこと。

 積小為大です。

 

4. 全体を通して

 

先日の台風19号による影響も随所に見られた道志村ですが、無事に研修会は終了しました。心配された雨も晴れ間が覗きむしろ清々しく、稽古の後は気持ちの良い汗もかきました。体育館は道志村教育委員会の隣にあって、昨年まで使用していた体育館よりもきれいで、眼下には道志川が見える自然豊かな山の風景が目に映ります。日帰りで参加していただいた先生方も多く、参加者の皆さんも例年よりも多かったような気がします。

 

八段の先生方の講話は、飛知和先生の剣道に関する心構えや稽古に望む自分自身の姿勢についてお話していただきました。織口先生のお話においては剣道を探求していくための妥協のない普段の稽古の在り方、一貫した剣道修行の在り方について語っていただきました。指導法を含め、審査形式の稽古、回り稽古、指導稽古と進めて一人ひとり丁寧にアドバイスをしていただきました。独りよがりになりがちな剣道を正しい眼でクリニックしていただくことで自分の粗が見えたと思います。夜の懇親会も充実して、話は尽きることなく深夜にまで及びましたが、様々な職種の方の経験話や普段では聞けない剣道の話まで楽しいひと時でした。

近くの道志温泉や石割の湯などの施設に立ち寄った方も多かったようで、近くの道の駅にも沢山の特産品が販売されていました。我が家も地味噌を買って帰り、帰宅してから味噌汁を作り食べましたが格別のおいしさでした。

 

最後に臼井前会長をはじめ、沢山の方から差し入れもいただきました。御礼申し上げます。また、飛知和、織口特別師範の先生方に置かれましては、ご多忙の中、熱いご指導をいただき感謝申し上げます。この度の研修会の幹事の先生方、研修宿泊所となりました山光荘のスタッフの皆様、ゲストで参加していただいた剣道日本の中村様、IBMの山下様には大変お世話になりました。誠にありがとうございました。